結婚に際して取り入れられるようになった習慣が二つある。ひとつは結婚前に健康診断書を交換すること。もうひとつは、自分で、または親戚か興信所に依頼して、縁談の相手の素姓や品行を事前にしらべる身元調査だ。例の生活改善同盟会による『結婚の志をり』にも調査と診断書のすすめが出てくる。我が国従来の習慣は結婚前に相互の血統だけは十分精密に調査をしますが、精神上に如何なる遺伝があるか等のことは余り調査しない遺憾があるのでございますから、今後は此の点に関して特に注意し、必要条件の一として精密な調査をすることが肝要でございます。と同時に〈今後は其の結婚に先立ち最も責任ある医師の診断書を相互に取交すことが必要でございます〉として、「結婚ニ関スル健康診断書」の書式までが載っている。これというのが、身長・体重・視力・聴力・既往症、骨格・栄養・呼吸器・消化器・神経系・血行系(循環器系)……と細かい項目に分かれており、しかも「総評」として、まるで徴兵検査のように甲乙丙丁のいずれかに○をつけるようになっているのだ。
空海の胞衣を納めたという胞衣塚が香川県下にあった。空海誕生のさいの不浄物を洗った場所は、聖地となり、そこは決して耕作されない。また滋賀県高島郡安曇町の胞衣塚は、その塚上に松が二株あって、俗にゴンデンノマツとよんでいた。ゴンデンは権現のことで神樹のしるしである。胞衣塚が聖地であることを示している。多くの場合、胞衣塚を掘り返すことは禁じられていた。そこを掘ると本体の子の身に害が及ぶのでは、という考え方もあった。霊魂の片方の行方が意識されていたことによる。『広辞苑』によれば心居の内側に埋めすぐそばには一つの小石をのせて供える作法が重要である。膳に小石をのせるのは、子の頭が固まるようにとの呪いとされる。あるいは不安定な生命を落ちつかせる意図でのタマ鎮めかも知れない。柳田国男説では、この小石は産神の依代とされている。
動作をていねいに見せるには、最初は普通のスピードで、後半ゆっくりと行うこと。おじぎは頭を下げたあとでゆっくりと上体を上げる。ドアを開けたら、最後にゆっくりと静かに閉める。テーブルにものを置くなら、テーブル面近くまでは素早く動かしてもいいが、置くときに音を立てずにそっと置く。これだけのことでしぐさが美しく心のこもったものになり、印象がアップする。ものを指し示すときには、指した方向を目線で追うと相手にもわかりやすく、ぐっと上品なしぐさになる。たとえば「時計はどこでしょうか?」と聞かれた場合、「はい、時計でございますね、あちらでございます」と手で指し示しながら自分も時計の方向に顔を向けて目をやり、ふたたび相手に目線を戻して確認して終わる。できる人は目で語ることができるのだ。